選挙の得票数と当選者数
「選挙で代表者を決めてその人たちに政治をやってもらう」っていっても、実際、選挙のやり方っていうのにもいろいろあって、今のこの国の衆議院選挙とか参議院選挙とかのやり方だと、ある政党の得票数の割合とその政党の当選者数の割合はかなり違うっていうこともけっこうあるな。
サキノブ(20歳・学生)えっ? その政党の当選者数って、みんなから投票してもらった数と同じくらいの割合になるんじゃないんですか?
コーシ(35歳くらい)例えば、2017年10月の衆議院選挙では、比例代表方式の方で自由民主党に投票したのは、選挙権がある人の中で17%くらいだけ、投票率は53.68%で、投票した人の中だけで見ても33%くらいだけだったけど、全体の選挙結果としては、当選者の約61%が自由民主党の人になった。
ソテ(28歳くらい)えっ? そんなに違うんですか。投票された中だけで見ても3分の1くらいの人にしか投票してもらってないのに、当選者数は6割、全体の半分以上になっちゃうんですか。う〜ん、ちなみに、得票率のわりに当選者の割合がかなり多くなる政党があるっていうことは、その分、逆に、得票率のわりに当選者の割合が少なくなる政党もあるっていうことですよね。
コーシ(35歳くらい)うん、例えばその時の立憲民主党は、投票した人の中だけで見ると20%くらいの人に投票してもらったけど、当選者の数は、全体の12%くらいしかなかった。
サキノブ(20歳・学生)えっ!? そんなに違うの!? 各政党で、実際に投票してもらった割合と当選者数の割合がそんなに違くて、でも国会では、当選した人たちが主に多数決で法律とか税金の使い方とかを決めてるの? それは国民みんなで多数決した場合とは全然違う結果になってることもあるんじゃ・・・? 選挙権がある人の17%くらいだけに投票してもらっただけなのに、国会では半分以上の議員数があって、国民全員が従わないといけない法律とか消費税を上げるとか、多数決でいろんなこと決められちゃうの?
ソテ(28歳くらい)まあ実際問題として、他のほとんどの政党が反対してたとしても、消費税を8%から10%に上げたりとか、安保法案っていうのの成立とかカジノ法案の成立とか、できちゃってるんですよね。ああいう件について国民投票とかしてたら結果はどうなったんだろうなあ。あっ、それから、内閣総理大臣(首相)を決めるのも、国会議員の多数決で決めてるんですよね。
ソータロー(35歳くらい)ちなみに、2017年10月の衆議院選挙で、比例代表方式の方で自由民主党に投票された票の数は1854万票くらいで、これは実は、2009年に民主党に負けた時の約1881万票よりも少ない。選挙権がある人の17%くらいだけにしか投票してもらえてねえし、得票数としては実はけっこう低い水準なんだが、この国の選挙の仕組み上、当選者数はけっこう多くなって、テレビとか新聞とかのニュースとかだと、「自民党が大勝した」「自民党一強」とかってさかんに報道されてるな。
サキノブ(20歳・学生)えっ? たった17%の人に支持してもらっただけで「大勝」「一強」? 全体の17%っていったら、6人に1人くらいの割合っていうことで、普通だったら少数派な感じじゃないですかね。しかも、数としても前に選挙で負けた時よりも少ないなんて。なんか最近の衆議院選挙は、首相が、自分たちに有利な時にやるようにしてるっていう話も聞きますけど、それでテレビとか新聞とかも「一強」だとかってさかんに煽ってて、それでも得票数はそんなもんなのかあ。ただ、それでも、結果として自由民主党はたくさんの人が当選になったんで、現状、この国全体の政治をかなり好き勝手にできちゃうんですよね。う〜ん、なんかニュースとかだと、今は「一強政治」だとか「一強多弱」だとかってよく言ってるような気がしますけど、本来はそんなにみんなに支持されてないところを、権力的に強くしすぎなんじゃないかなあ。投票した人の中だけで見ても、3分の2以上の人は自由民主党じゃない政党に投票してるのに。
ソテ(28歳くらい)う〜ん、政治とか選挙の仕組みとかにあまり詳しくない人だと、当選者が多かったからそれだけたくさんの人がその政党に投票したんだって思っちゃう人も多いんじゃないかなあ。テレビとか新聞とかは、その政党の当選者数ばっかりじゃなくて、実際の得票数の方をもっと、民意の結果としてしっかり報道してくれた方が、みんなにとって役に立つ情報になるんじゃないかなあ。その方がそのテレビ局とか新聞とかも役に立つ情報源としてみんなから信頼されるようになるんじゃないかなあ。
サキノブ(20歳・学生)この国の人は周りの空気とかに流されやすい人も多そうだけど、テレビとか新聞とかがさかんに「一強」って言ってるのを聞いて、「みんな支持してるんだ」って思って、「じゃあ自分も」とか「じゃあそれでいいか」とかって思っちゃう人とかもけっこういるんじゃないかなあ。テレビとか新聞とかは、そういう国民性もわかってて、あえて、本来はそんなにみんなに支持されてないところだけどそこを持ち上げて宣伝するようにしてるのかなあ。それは実際問題としてみんなに間違った印象を与えてたりそれでみんなを扇動してたりしてて、いわゆる「偏向報道」とかなんじゃないかなあ。事実上、みんなをだましてるんじゃないかなあ。それで国民はみんな幸せになれるのかなあ。民主主義国家の報道ってそんなのでいいのかなあ。
ソータロー(35歳くらい)まあ、たとえ少数からの支持で当選してたり多数派になってたりしても、いつも国民全体の意見とかをよく聞いて、いつも国民みんなのことを第一に考えるような奴らが当選してれば、結果的に国民にとって良い政治が行われることになるんじゃねえかと思うけど、さて、今の政治家の連中はどうかな?
ソテ(28歳くらい)ちなみに、選挙の仕組みからして、投票に行かない人が多くなると、少ない得票数で当選になる人が増えて、少数の支持だけで当選しちゃう人が増えそうですかね。
ソータロー(35歳くらい)みんなあまり投票に行かねえ状態だと、例えば、全体の20%の人に対して、「君たちだけが特別に得をする政治をしよう、みんなから集めた税金を君たちに配ろう」とかって言って、全体の20%の人から自分たちに投票してもらえば、それで議会で多数派になってやりたい放題できちまいそうだよな。そんなんだったら、選挙とかしてたって、実際は全然、民主主義だとか国民主権だとかにはならねえんじゃねえかな。一部の人たちだけが優遇される、「貴族と奴隷」みてえな状態になっちまうことも十分ありえるんじゃねえかな。
サキノブ(20歳・学生)あっ、「上級国民と一般国民」・・・。う〜ん、そう考えると、選挙で誰にも投票しないっていうのも、実はかなりリスクがありそうですかね。自分がかなり損をしたりする可能性とかが増えそうですかね。
コーシ(35歳くらい)例えば、若い人があまり投票をしてないと、今の老人ばっかりを優遇する政治になっちゃったり、国として借金をたくさんしてその返済は今の若い人たちの世代に押し付けられるなんてこととかも起こりえるんじゃないかな。
ソテ(28歳くらい)うわっ、それはおそろしい。・・・って、そういうのって、実はもうすでにかなり起こってしまってるんじゃ・・・。まあ、そういうこともあるんで、誰に投票するかとかはできるだけ自分で考えて判断した方が良さそうっていうことですかね。
コーシ(35歳くらい)
ちなみに、都道府県の議員選挙とか市町村の議員選挙とかだと、国の衆議院選挙とか参議院選挙とかとはまた状況がかなり違ったりする。例えば、2023年4月の埼玉県川口市の市議会議員選挙だと、
- 当選できるのは42人、立候補者は62人
- 有権者が投票できるのは一人だけ
- 有権者数は476,757人、投票したのは164,017人、投票率は34.40%
- 当選した人で一番得票数が少なかった人の得票数は2,443票で、有権者の約0.51%
- 一番得票数が多かった人でも得票数は5,807票で、有権者の約1.22%
- 落選した人で一番得票数が多かった人の得票数は2,433票で、当選した人とは10票差
だった。
サキノブ(20歳・学生)えっ? 0.5%くらいの人に支持してもらえれば、それで市の議員になれるんですか。投票できる人が47万人以上もいる中で、2千5百人くらいに投票してもらえれば当選できちゃうんですか。
ソータロー(35歳くらい)まあ、99%以上の人に嫌われてても議員になれるってことかな。マイナス票の投票みてえなのはねえわけだしな。
ソテ(28歳くらい)う、う〜ん、これは、みんなせいぜい1%くらいの人にしか認めてもらえてないかもしれないっていうことでもあるのかなあ。それで、多かれ少なかれ、みんなのルールとかを決める権力を持つことになるのかあ・・・。
サキノブ(20歳・学生)なんかこれ、おかしな宗教団体でもある程度支持者がいたりとか、その地域でなんかちょっと有名人だったりとかしたら、けっこう簡単に議員になれちゃうんじゃないですかね? 実際問題としてそんなようなケースもけっこうありそうかな。
コーシ(35歳くらい)まあ、投票率が低かったりするとそんなこともさらに起こりやすくなるんじゃないかな。